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2026.7.9NEW
アルミは作るのになぜ大量の電気を必要とするのか
アルミは、自動車や建築資材、電子機器など、私たちの暮らしに欠かせない金属です。しかし、その一方で、新しいアルミを製造するには非常に多くの電力を必要とすることをご存じでしょうか。
その理由は、アルミニウムが自然界では鉱石として存在し、純粋なアルミを取り出すために「電気分解」という工程が必要だからです。
本記事では、アルミ製造に大量の電気が必要な理由や、その仕組み、さらにリサイクルが省エネルギーや環境負荷の低減につながる理由について詳しく解説します。
アルミは作るのになぜ大量の電気を必要とするのか
~アルミニウム製造の仕組みから、日本の現状、今後の課題まで徹底解説~
アルミニウムは、軽くて錆びにくく、加工しやすい金属として、自動車や航空機、建築、食品容器、電子機器など幅広い分野で利用されています。
しかし、アルミには「電気の缶詰」という別名があることをご存じでしょうか。
これは、アルミを新しく製造するには膨大な電力が必要だからです。
実際、アルミを1kg製造するためには約13~15kWhもの電力が必要であり、一般家庭が約半日使用する電力量に相当します。
なぜアルミだけがここまで電気を必要とするのでしょうか。
今回はアルミが大量の電気を必要とする理由を、製造工程と科学的な仕組み、日本の歴史も交えながら分かりやすく解説します。
アルミは自然界に「金属」として存在しない
鉄は鉄鉱石から比較的簡単に取り出すことができます。
一方、アルミは自然界に純粋な金属として存在していません。
アルミニウムは酸素との結び付きが非常に強く、酸化アルミニウム(Al₂O₃)
という非常に安定した状態で存在しています。
この酸化アルミニウムを取り出すには、酸素との強力な結び付きを切り離す
必要があります。
ここに莫大なエネルギーが必要になるのです。
原料はボーキサイト
アルミの原料はボーキサイトという鉱石です。
主な産地は
・オーストラリア
・ギニア
・ブラジル
・インド
・インドネシア などになります。
ボーキサイトからまず酸化アルミニウム(アルミナ)を作ります。
ここまでは比較的普通の化学工場です。
問題はその先です。
アルミナを金属に変える方法
酸化アルミニウムから酸素を取り除く方法は大きく2つあります。
鉄の場合、高炉でコークスを燃やせば酸素を取り除くことができます。
しかしアルミは違います。
アルミは酸素との結合力が鉄よりはるかに強く、
火で加熱した程度では酸素は離れません。
そこで使われるのが 電気分解 です。
電気分解とは
電気を流して化学反応を起こす方法です。
アルミ工場では巨大な電解槽の中に
・アルミナ
・氷晶石(Cryolite)
を入れます。
氷晶石はアルミナを約950℃前後で溶かし、電気を流しやすくする役割があります。
ここへ数十万アンペアという巨大な電流を流します。
するとアルミイオンが電子を受け取り、純粋なアルミニウムになります。
つまり 電気そのものがアルミを作っている と言っても過言ではありません。
なぜ熱ではなく電気なのか
ここが一番重要です。
アルミは非常に反応性が高い金属です。
周期表でも酸素との結合が非常に強い元素として知られています。
鉄なら
炭素
↓
酸素を奪う
↓
鉄になる
という反応ができます。
しかしアルミは
炭素より酸素との結び付きが強いため
コークスでは還元できません。
そのため電子を直接与える電気分解しか方法がないのです。
電気分解では巨大な電流を流す
アルミ工場では
約300,000〜600,000アンペア
という想像できないほど大きな電流が流れています。
一般家庭は30~60アンペア程度です。
つまり
家庭約1万戸分近い電流が
一本の電解槽へ流れていることになります。
電圧は5V前後と低いものの、
電流が非常に大きいため、
消費電力は莫大になります。
24時間止めることができない
アルミ工場最大の特徴は
止められない
ことです。
電解槽の中は約950℃。
もし電気を止めると
アルミナが固まり、
設備全体が使用不能になることがあります。
そのため
365日24時間
休まず操業します。
夜中も
休日も
年末年始も
ずっと電気を使い続けています。
アルミ1トンにはどれくらい電気が必要?
一般的には
13,000~15,000kWh 必要になります。
これは
一般家庭約4〜5世帯が1年間に使う電力量に相当します(家庭の使用量によって変動)。
つまり
アルミ1トンを作るだけで
小さな住宅数軒分の年間電力を消費する計算になります。
日本でアルミ精錬がなくなった理由
1970年代までは
日本でもアルミ精錬が行われていました。
しかし
1973年のオイルショック
によって電気料金が急上昇しました。
アルミ製造コストの約3〜4割は電気代と言われています。
日本は火力発電比率が高く
電気料金も世界的に高い国です。
その結果
国内のアルミ精錬会社は次々と閉鎖。
現在、日本では商業規模の一次アルミ精錬は行われておらず、新地金は海外からの輸入に依存しています。
世界のアルミ精錬は電気の安い国へ
現在のアルミ精錬は
電気料金が安い国へ集中しています。
代表例は
・カナダ(水力)
・ノルウェー(水力)
・アイスランド(地熱・水力)
・アラブ首長国連邦(天然ガス)
・中国(石炭・水力)
・インド
などです。
特に水力発電は発電コストが低く、CO₂排出量も少ないため、アルミ精錬との相性が良いエネルギー源です。
電気代がアルミ価格を左右する
アルミ価格は LME価格だけでは決まりません。
実は世界の電気料金も大きく影響しています。
例えば
・電力不足
・発電所事故
・天然ガス高騰
・石炭価格上昇
・水不足による水力発電減少
などが起こると、
アルミ工場は減産します。すると供給不足となり、世界のアルミ価格が上昇します。
2021~2023年には欧州の電力価格高騰により、多くのアルミ精錬所が減産・停止し、国際価格が大きく変動しました。
リサイクルアルミは電気使用量が約3%
ここで注目されているのが
再生アルミ(リサイクルアルミ) です。
アルミは溶かしても品質がほとんど劣化しません。
そのため
スクラップを溶解するだけで再利用できます。
必要なエネルギーは
新地金製造の約3%程度。
つまり約95%ものエネルギー削減につながります。
この特性からアルミは「リサイクルの優等生」とも呼ばれています。
日本で再生アルミの価値が高まる理由
日本は一次アルミを海外に依存しています。
一方で
加工スクラップや使用済み製品など、質の高いアルミ資源が国内で多く回収されています。
再生アルミの活用は、
・エネルギー消費の削減
・CO₂排出量の低減
・資源の有効利用
・輸入依存の軽減
・サプライチェーンの安定化
といった多くの利点があります。
さらに近年は、自動車メーカーや飲料メーカーを中心に、製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らす動きが広がっており、再生アルミの需要は今後も拡大すると見込まれています。
アルミ製造と脱炭素の関係
世界では「グリーンアルミ」と呼ばれる低炭素アルミの開発が進んでいます。
これは、水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギーを利用して精錬したアルミや、再生材の比率を高めたアルミを指します。
また、電解工程で発生するCO₂を削減するため、炭素電極の代わりに新しい材料を使う技術の研究も進められています。こうした技術が実用化されれば、アルミは現在よりもさらに環境負荷の低い素材になる可能性があります。
アルミ加工メーカーにとって重要な視点
アルミ加工を行う企業にとって、材料そのものの価格だけでなく、その背景にあるエネルギー事情を理解することは重要です。
アルミ価格の変動には、
・電力価格
・エネルギー政策
・地政学リスク
・為替
・脱炭素政策
・リサイクル率
など、多くの要因が関係しています。
そのため、価格変動を見極めながら、材料歩留まりの向上やリサイクル材の活用、加工方法の工夫によってコストを抑えることが、今後ますます重要になります。
まとめ|アルミは「電気」を形にした金属
アルミが大量の電気を必要とする理由は、酸素との結び付きが非常に強く、
火では取り出せず、電気分解という方法でしか金属にできないからです。
そのため、新地金の製造には莫大な電力が必要となり、アルミは「電気の缶詰」とも呼ばれています。
一方で、アルミはリサイクル時のエネルギー消費が新地金製造のわずか約3%で済む、
非常に環境性能の高い素材でもあります。脱炭素社会が進む現在、再生アルミや低炭素アルミの重要性はますます高まっており、アルミは「エネルギーを大量に使う素材」であると同時に、「資源循環を支える素材」としても注目されています。
アルミ価格の背景には、LME相場や為替だけでなく、世界の電力事情やエネルギー政策、環境規制が密接に関わっています。こうした背景を理解することで、アルミという素材をより深く知り、その価値を実感していただけるのではないでしょうか。
アルミは製造時には多くの電力を必要とする一方で、リサイクル時のエネルギー消費は新地金製造と比べて約95%削減できるとされています。そのため、アルミは環境負荷の低減と資源循環を支える代表的な素材として、これからのものづくりに欠かせない存在です。
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監修者

- 取締役社長
中 保博
昭和軽金属はアルミの加工だけにとどまらないご相談を大切にしています。
設計通りに加工することは簡単です。
その背景にある、お客さまがアルミを加工したい目的はなにか、どのようなカタチで最終品として使われるのか、どうしたら便利に利用されるか。
アルミ加工+「X」を考えてお話することで、お客さまや消費者さまの「!」を生み出します。