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2026.8.7NEW

アルミ接着の最新技術|EV時代を支える構造用接着剤と接合技術を解説

近年、自動車業界ではEV(電気自動車)の普及に伴い、アルミ接着技術への注目が高まっています。アルミは軽量で耐食性に優れる一方、従来のスポット溶接では接合が難しい素材です。そのため、構造用接着剤やセルフピアスリベット(SPR)を組み合わせた新しい接合技術が世界中で採用されています。本記事では、アルミ接着の仕組みやメリット、最新技術、今後の展望まで詳しく解説します。

 

 

アルミの接着最前線 

~EV時代が変えた接合技術の常識と、自動車産業で広がる構造用接着の未来~ 

 

近年、自動車産業では「軽量化」がこれまで以上に重要なテーマとなっています。その背景には、燃費向上やCO₂排出量削減だけでなく、EV(電気自動車)の普及があります。EVは大容量バッテリーを搭載するため車両重量が増加し、その重量を補うためにアルミニウムの採用が急速に進んでいます。 

 

しかし、アルミニウムの利用拡大とともに新たな課題として浮上したのが「接合方法」です。鉄では一般的だったスポット溶接だけでは対応が難しく、現在では構造用接着剤を利用した接着工法が世界中の自動車メーカーで採用されています。 

 

接着というと家庭用ボンドを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、自動車に使われる構造用接着剤は、車体そのものの強度や衝突安全性を支える重要な技術です。本記事では、自動車業界で進化を続けるアルミ接着技術について詳しく解説します。 

 

 

なぜアルミは接着が必要なのか 

 

アルミニウムは鉄とは大きく異なる性質を持っています。 

代表的な特徴は次のとおりです。 

 

 ・鉄の約3倍の熱伝導率 

 ・鉄より大きい熱膨張率 

 ・表面に強固な酸化皮膜を形成 

 ・比重は鉄の約3分の1 

 ・優れた耐食性 

 

これらはアルミの長所ですが、接合という視点では課題にもなります。 

例えばスポット溶接では熱が周囲へ逃げやすく、高出力設備が必要になります。また熱による歪みも発生しやすく、寸法精度の管理が難しくなります。さらに熱処理材では、溶接熱によって強度が低下する場合もあります。 

 

そのため、アルミを多用する現在の自動車では、溶接だけに頼るのではなく接着技術が不可欠になっています。 

 

 

接着は「点」ではなく「面」で支える 

 

スポット溶接は点で接合します。 

例えば100か所のスポット溶接なら、荷重を支えるのは100点だけです。 

一方、接着剤は接着面全体で荷重を受け持ちます。 

 

この違いにより、 

 ・応力集中の低減 

 ・疲労強度の向上 

 ・剛性向上 

 ・クラック防止 

 ・振動低減 

 

といった多くのメリットが得られます。 

ボディ全体が一体化することで、走行性能や静粛性の向上にもつながっています。 

 

 

自動車で使われる構造用接着剤とは 

 

現在主流となっているのはエポキシ系構造用接着剤です。 

 

一般的な接着剤とは性能が大きく異なり、 

 ・高強度 

 ・高耐熱 

 ・耐水性 

 ・耐薬品性 

 ・耐疲労性 

 ・長寿命 

 

を兼ね備えています。 

多くは車体組立後、塗装工程の焼付炉で加熱されることで硬化します。そのため、生産工程を効率化できる点も大きなメリットです。 

 

用途によってはウレタン系、アクリル系、シリコーン系なども使用され、柔軟性やシール性、防水性を重視する部位で活躍しています。 

 

 

EVが接着技術を大きく進化させた 

 

接着技術がここ10年で急速に進歩した最大の理由はEVです。 

EVではバッテリー重量が300~600kgにもなることがあり、車体にはこれまで以上の剛性が求められます。 

 

さらに、 

 ・防水 

 ・耐衝撃 

 ・耐振動 

 ・放熱性 

 ・耐久性 

 

を同時に満たさなければなりません。 

そのため接着剤は単なる接合材ではなく、車両性能を左右する重要部品となっています。 

 

 

バッテリーケースにも大量の接着剤 

 

EVのバッテリーケースは、 

 ・アルミ押出材 

 ・アルミ鋳物 

 ・アルミ板金 

 ・冷却プレート 

 ・補強材 

 

など、多数のアルミ部品で構成されています。 

 

接着剤はこれらを一体化させるだけでなく、 

 ・水密性の確保 

 ・異音防止 

 ・振動吸収 

 ・防錆 

 ・電食防止 

 

など多くの役割を担っています。 

 

近年では一台当たり5~10kg以上の接着剤が使用されるEVも珍しくありません。 

 

 

SPRとの組み合わせが主流 

 

現在、自動車業界で最も普及している工法が 

SPR(セルフピアスリベット)+構造用接着剤 

です。 

 

セルフピアスリベットは下穴を開けずにアルミをかしめる工法で、 

 ・仮固定 

 ・高い接合強度 

 ・高速生産 

 ・自動化 

 

に優れています。 

 

接着剤が硬化するまで部材を保持できるため、生産性と品質を両立できます。 

 

 

異種材料接合を可能にする 

 

現在の車体には 

 ・高張力鋼板 

 ・アルミ 

 ・CFRP 

 ・マグネシウム 

 ・樹脂 

 

など、多様な材料が使われています。 

 

異種金属同士を直接接触させると電食(ガルバニック腐食)が発生することがあります。 

 

接着剤は絶縁層としても働くため、 

 ・電食防止 

 ・防水 

 ・応力緩和 

 

にも効果があります。 

 

異種材料の採用が増えるほど、接着技術の重要性は高まっています。 

 

 

接着によるボディ剛性向上 

 

接着剤の最大の利点はボディ剛性の向上です。 

 

接着された車体は荷重が広い範囲へ分散されるため、 

 ・コーナリング性能 

 

・操縦安定性 

 ・ブレーキ時の安定性 

 ・乗り心地 

 ・静粛性 

 

が改善されます。 

 

EVではモーター音が静かなため、ボディから発生するわずかな振動や異音も目立ちます。接着剤はNVH(騒音・振動・乗り心地)性能の向上にも大きく貢献しています。 

 

 

接着が使われる主な部位 

 

現在では車体のさまざまな場所で構造用接着剤が使用されています。 

 

 ・フロアパネル 

 ・サイドシル 

 ・ピラー 

 ・ルーフ 

 ・ドア 

 ・ボンネット 

 ・テールゲート 

 ・バッテリーパック 

 ・クラッシュボックス 

 ・サスペンション周辺 

 

近年ではギガキャスト部品と押出材、鋳物との接合にも活用が進んでいます。 

 

 

自動車メーカーの採用事例 

 

欧州メーカーはアルミ接着技術を早くから導入してきました。 

特に高級車では接着とリベットを組み合わせた構造が一般化しています。 

 

近年では、 

 ・テスラ 

 ・BMW 

 ・アウディ 

 ・メルセデス・ベンツ 

 ・ジャガー・ランドローバー 

 

などが積極的に採用しています。 

 

日本メーカーでもEVやハイブリッド車を中心に利用が拡大しており、今後さらに普及すると考えられています。 

 

 

接着技術の今後 

 

今後はさらに高性能な接着剤が登場すると期待されています。 

 

例えば、 

 ・常温短時間硬化 

 ・リサイクル時に剥離可能 

 ・放熱性能を持つ接着剤 

 ・導電性接着剤 

 ・難燃性接着剤 

 ・AIによる塗布量管理 

 ・ロボットによる自動塗布 

 

など、新しい技術開発が進められています。 

 

EVの高性能化に伴い、接着剤も「貼る材料」から「機能を持つ材料」へ進化しています。 

 

 

アルミ加工メーカーにとってのビジネスチャンス 

 

アルミ部品を供給する企業にとっても、接着技術への対応は競争力を左右します。 

 

接着品質を安定させるためには、 

 ・接着面の表面処理 

 ・脱脂・洗浄技術 

 ・表面粗さ管理 

 ・接着クリアランス設計 

 ・接着剤塗布精度 

 ・硬化条件管理 

 

など、多くの技術が求められます。 

 

単に「部品を作る」だけでなく、「接着しやすい部品を設計・供給する」ことが、新たな付加価値となる時代です。 

 

 

まとめ 

 

アルミニウムの接着技術は、自動車の軽量化やEVの普及を支える重要な基盤技術へと進化しています。従来の溶接やボルト接合では難しかった

異種材料の接合、高い車体剛性、防水性、静粛性、耐久性を実現し、

現在では構造用接着剤とセルフピアスリベットを組み合わせた工法が世界の主流となっています。 

 

今後はギガキャスト部品や次世代バッテリー、マルチマテリアル車体の普及に伴い、接着技術の役割はさらに拡大するでしょう。アルミ加工メーカーにとっても、接着を前提とした設計・加工・表面処理技術を磨くことが新たな競争力となります。 

 

「接着は補助技術ではなく、車体性能を決める中核技術」

――この考え方こそが、これからのアルミ加工と自動車づくりを支えるキーワードとなるでしょう。 

 

 

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監修者

  • 取締役社長

中 保博

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